コラム
加速する意思決定
この度のコロナ禍で我々は空前の自粛・テレワーク・おうち時間ブームに見舞われた。企業はオンラインでの業務・意思決定を強いられ、大学もオンライン授業、我々Liquitousも例外なく、創業早々今年の前半はオンラインでの会議を迫られた。
ただ、こうした動きは近年提唱されてきた「働き方改革」「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」とも相性が良いようで、筑波大の調査によればテレワークを導入した企業の社員の約8割がテレワークにという勤務形態に満足しているという。
突然のコロナ禍や各国で発令された緊急事態宣言にも関わらず、(多少の混乱はあったにせよ)これほどスムーズに対応ができているのはやはり、society5.0と言われるように、これまでの技術革新や環境整備があってのことであるのはもはや言うまでもない。(たらればにはなってしまうかもしれないが)もし同じことが10年前、100年前に起きていたらここまでの臨機応変かつ大きな遅れのない対応・意思決定は難しかっただろう。
数十年来の通信環境、インターネットの整備・普及が突然の遠隔・オンライン業務という課題を乗り越えるのに功を奏した。
そもそも、今回急速に普及したような遠隔、言い方を変えるなら場所を問わない業務・意思決定、その歴史を辿ると、おそらくその元祖といえるのは18世紀後半の腕木信号が挙げられるであろう。当時は電波があるわけでも無く、郵便で情報をやりとりしていた時代であり、腕木通信を使って合図を数百kmもの距離を数分で伝える通信方式は当時としては画期的だった。
その後、電信線が登場しモールス信号を使って通信する時代になると、通信社の登場により情報の流通がより加速、そして時代を追うごとに電話線、ADSL、移動体通信(携帯電話)、光回線と急激な進化を遂げている。
特にインターネットが登場してからというもの、情報の量・速さともに拡大を続けている。
量という点では2020年には世界の情報量は59ZB(Gの1兆倍)などというとてつもない量に達するともされている。速度という点でも現在の光回線やWi-Fiや4Gといった無線方式は動画を見たりアップしたりするのに申し分ない速度を出せている。オンラインで会議ができるのも先述の通りこの恩恵に預かっているからである。
ただ、従来の通信では会議ができるといっても、多少の遅延や混雑によるスピードダウンは存在はする。ネット環境の差による通信面での格差は依然として否めない。
しかし、4Gの何倍も早い5G・6Gや、GPSのように地球上ならどこでもネットにアクセスができる地球低軌道インターネット、盗聴の心配なく決済や投票ができる量子インターネットなどの登場はこれらデジタル化の波を更に加速・増幅させていくであろう。
このような技術革新により、遅延や場所といった制約が外れれば、society5.0を実現するだけにとどまらず、意思決定に必要なコミュニケーションを円滑化し意思決定を更に高速化していくのではないだろうか。
とはいえ、機器やシステムがダウンして使えなくなってしまっては元も子もない。DXを一時の流行りではなく永続化させていくためにも、適切な人材・リソースを投入して維持・管理していくことも肝要であろう。
Author

琴浦将貴
Masaki Kotoura
Researcher / CTO
テクノロジーで社会を創る
2000年関西生まれ。 関東で育ち、東京都市大学理工学部に在学。Liquitousへは政策企画部門にリサーチャーとして参画。 大学では電気や通信について学んでいるが、それ以外にも交通、行政、危機管理や量子通信など様々な分野に興味関心がある。

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