調査研究

政策企画部門

藤井海

2020/09/26

オープンイノベーションの可能性

あらゆる変化に対応していくために

オープンイノベーション

変化

技術の急速な発展と多様性の拡大が著しい現代の社会は、その「変化」に柔軟に対応する能力がより求められる。企業にとっても同じである。日々人々の需要が変化し、あらゆるサービスが必要になっているため、企業側もそれに対応する柔軟さと迅速さがより求められる時代となった。言い換えれば、人々の需要に対して、柔軟に且つ迅速に対応できない企業は市場で生き残れないことを意味する。今の日本企業は人々の需要の変化に十分に対応しきれているだろうか。世界時価総額ランキングを見ると、平成元年の段階では、日本企業は世界の中でもトップクラスの時価総額であり、上位50社中32社を日本企業が占めていた者の、平成31年のランキングにおいては、日本企業はトヨタ自動車のみである[1]。

今はアメリカを筆頭にどの企業も急成長を遂げており、日本企業が世界に名を轟かせていたのは過去の話となった。この状況を打開するために「オープンイノベーション」がカギを握ると考えている企業が増えている。令和初の政府の重点施策文書にも「オープンイノベーション」の言葉が多数掲載されていることから、政府内でもオープンイノベーションに対する期待は高いと言える[2]。

オープンイノベーションとは

オープンイノベーションとは、「組織内部のイノベーションを促進するために、意図的かつ積極的に内部と外部の技術やアイデアなどの資源の流出入を活用し、その結果組織内で創出したイノベーションを組織外に展開する市場機会を増やすこと」[3]であり、自社の技術を外部に提供し、製品開発を行うアウトバウンド型と、社外の技術を自社の製品開発に取り入れるインバウンド型の二種類がある[4]。

前者は、技術はあっても収益化する術をもたない比較的規模の小さいスタートアップ企業が積極的であり、後者は、豊富な資金やマーケティング技術を背景に、他者の技術を取り入れることができる大企業が積極的に行うことが多い。

繰り返す変化に対応するためにも、商品開発の速度を上げ、より複雑なシステムが必要になった現代社会では、自社の研究開発部門だけの技術では賄いきれない。よって、他の企業と連携することによって、新しい技術を取り入れ、より高度なサービスや商品を開発することができるオープンイノベーションの仕組みが、自社のみの技術開発のみでイノベーションを生み出す企業(クローズドイノベーション企業)にとって喫急に課題となっている。

昨今は実際に、大阪ガス、トヨタ自動車、資生堂、シャープなどが、外部から最適な技術を獲得するために研究開発課題を公募して提案を募るオープン形式の連携先探索を行っている[5]。他にも日立製作所、IHI、富士通ゼネラル、パナソニックなど多数の企業が、オープンイノベーションプログラムや部門を設置し、積極的に取り組んでおり、成功の事例は多い。

さまざまな課題

しかし、オープンイノベーションには課題も多い。まずは、経営層のオープンイノベーションの必要性や目的の理解が社員に伝わらず、社内のモチベーションに齟齬が生じてしてしまうことによって、うまく機能しないことが挙げられる[3]。この現象は、長らく日本企業が、年功序列などの仕組みに即して意思決定を行ってきたために、社内で大きな変化を要する際に、経営層と社員の心的距離が離れてしまっていることが原因だと考えられる。

また、今までの日本企業は自社の技術のみで事業規模を拡大してきたために、他者と連携して事業を拡大するノウハウがない。そのため、オープンイノベーション部署を設置し、事業化を見据えた業務に位置付けられたとしても、商品の開発段階での費用分担等の合意が困難であることや、十分に社内・外で連携が取れないことが原因で、意思決定のスピードが合わないなどの問題が生じ、新規事業や商品開発で必要な業務がスムーズに進まないという課題がある。さらには、取引先が自社のノウハウを流出され、技術的優位性が喪失した企業や、ノウハウを内製化したり、他の安い事業者へ発注するようになった事例があり、自社の技術を提供するにあたって、知的財産をしっかりと権利化しなかったために生じる問題もある[6]。

解決に必要な要素

国内と海外における具体的なオープンイノベーションの推進事例の共通点や、オープンイノベーションを推進できていない企業との特徴的な差異などを多角的に分析した。

オープンイノベーションの取り組みを成功に導く要因

・戦略・ビジョン等の組織構造上の要素

・外部とつながるための組織のオペレーション

・文化・風土といったソフト面の要素

引用元:オープンイノベーション協議会(JOIC)事務局 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)『オープンイノベーション白書』p.36(https://www.nedo.go.jp/content/100790825.pdf

上記の三要素を改善し、他社パートナーとの連携が不可欠であるオープンイノベーションを進めていくためにも、組織内・外での社員同士のコミュニケーションをより充実させ、社内のモチベーションの齟齬を解消し、意思決定や合意形成のスピードを合わせる必要がある。オープンイノベーションを通して、日本の企業がより人々の需要に迅速かつ柔軟に対応できるようになることで、日本企業の市場価値も上昇し、停滞している日本経済を活性化させるきっかけになる可能性が生まれてくる。

多くの企業にとって「変化」は大きな痛みを伴うものである。しかし、今回のコロナ騒動で人々の生活は一変し、その変化に伴って新しい需要が生まれ、その需要に対応するサービスも多く生まれている。このような現状から分かる通り、これからの日本企業は、変化に対応する力が必要不可欠であり、その変化に対応するための手段として「オープンイノベーション」がある。オープンイノベーションを進めていくために、社内の意思決定のスピードと共有力を上げ、外部との連携をする仕組みを構築し、あらゆる「変化」に対して柔軟に対応できる企業文化を作り上げていく必要があるだろう。

参考文献

Author

藤井海

Researcher of Policy Research Div.

2000年生まれ。東京都台東区出身。法政大学法学部政治学科に在学。中学生の頃、台東区のデンマーク海外派遣に参加し、日本とデンマークの教育や政治などの社会システムの違いに衝撃を受ける。以来、政治に関心をもち、大学では主に経済分野から政治を学ぶ。CBO明田の紹介でリサーチャーとして参画。

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