調査研究

政策企画部門

藤井海

2020/08/18

国民の政治に対する意識調査と研究

当事者意識

民主主義

現在も続いているコロナ禍において、国民が政府に期待する対応と、政府が実際に行った対応に多くの乖離が見られたように思う。今年8月に時事通信行った世論調査では、安倍内閣の支持率は32.7%で前月から2.4ポイント減少しており[1]、クラスターフェスのような運動などが見られるように、国民の社会に対する不安や不満が蓄積されている印象を受ける。新型コロナウイルスの流行は、政府の対応に様々な問題が生じたことで、政府との関係を改めて考える機会をつくるきっかけになったのではないだろうか。この記事では私たち国民が日本の現状についてどのような評価をしているのかを、コロナ禍下における調査と過去の調査を踏まえて明らかにし、そこから分かる問題点を探っていく。

コロナ禍下での政府に対する評価

エデルマン・ジャパン株式会社は、「2020 エデルマン・トラストバロメーター中間レポート5月版):信頼とCOVID-19パンデミック」の日本の調査結果を2020年5月に発表した。これは、カナダ・中国・フランス・ドイツ・インド・日本・メキシコ・サウジアラビア・韓国・イギリス・アメリカの世界11カ国、約13,200人を対象に実施した信頼度調査である。

この調査において注目すべきは、政府に対する信頼度である。2020年1月から2020年5月までに多くの国は順調に信頼度を上げ、11か国平均で11ポイント上昇した。しかし日本は5ポイント減少させており、11か国の中で唯一政府に対する信頼度を低下させている点である。また、日本では、中央政府/中央省庁に対する信頼度が35%なのに対し、地方政府/地方自治体に対する信頼度が50%と、国民は首相よりも地方自治体のリーダーをより信頼しているという結果も見られた。この差は、アメリカに次ぐ数値である。このように、自国の政府に対する信頼の低い国においては、地方の政府がそのギャップを埋めていることが分かる[2]。

コロナ禍下での日本政府の対応の評価が愚直に数字として表れた。現在のコロナ騒動は各国のリーダーシップを問う局面でもある。日本政府は、リーダーシップを発揮しきれていないというのが筆者の見解だ。加えて、中央政府よりも地方自治体を信頼しているという点においても、日本は外国と比べ政府と国民の距離が遠いことを表しており、そのような状況下では、より日常生活で関わりのある地方自治体を信頼するのは当然のことである。

国民の政治に対する評価

コロナ禍以前から、国民の政府に対する透明性や信頼の問題は根強い。NHK放送文化研究所は、選挙権が18歳に引き下げられた初めての選挙である2016年参議院選挙を受け、「18歳選挙権 新有権者の意識と投票行動~「参院選後の政治意識・2016」調査から(2)~」を公表した。これは全国18歳以上の国民1200人(6人×200地点)を対象として、2016年9月1日~10月20日に調査したものだ。

この調査で興味深いのは政治的関心・政治意識に関しての調査である。20歳以上の今の国の政治に満足している人の割合は28%であり、約70%は『不満(「どちらかといえば」を含む)』である。さらに政治に対する国民の期待や要求が国の政治に反映されているかという質問に関しては、どの年齢層も『反映されていない(「あまり」+「まったく」)』が多い。具体的には、20歳以上の75%が反映されていないと思っている。

このように、多くの日本国民は現在の政府に対して、満足しているとは言えず、民意も反映されていないと感じていることが分かる。しかし、政治に対する変化の期待をみると、今の政治が「大きく変わってほしい」と思っている人(20歳以上)は19%であり、少ない。この調査から、日本国民は民意が反映されにくく、現在の政府に満足していないのにも関わらず、現状を変えるという意識を持つ人が少ない傾向にあるということ分かる[3]。

これらの調査結果から分かること

上記の調査結果によると、政府に対する信頼度、満足度、民意の反映はどれも低い値であった。しかし、NHK放送文化研究所が公表した2016年時点での調査結果から分かる通り、そのような政治を変えようとする国民は少ない。しかしこれは政治を変えようとする意志を持たないのではなく、「持つことができない」と捉えることもできる。日本では「政治」はどこか遠いところで行われているものという印象を持つ傾向があり、主権者という自覚を持ちにくい。この「当事者意識の希薄化」は代議制民主主義という日本の政治システムの産物である。代議制民主主義下では間接的にしか政治に参加しないため、国民は当事者意識を持つことが難しい。そして国民は影響力を発揮できないと自覚しているため、現状に不満を抱いても行動に移さないという状態に陥るのである。詳しくは拙稿「日本の民主主義を考える/」でも述べたが、民主主義の本質は「自分で決めたいという欲求」である。

このまま国民が自国に対して持つ「自分で決めたいという欲求」が減少し続け、当事者意識の希薄化が進むと、日本が民主主義である意味をなさず、民主主義崩壊につながりかねない。現状を変えようとする国民が少ないというのは、国民の当事者意識が低いことの表していると言える。また、コロナ禍下において各国が政府の信頼度を上昇させた一方で、日本だけが減少させた点においても、現在の中央政府がリーダーシップを発揮しきることができなかっただけの問題ではなく、日本の政治システムの綻びが顕著に表れたと考えるべきではないだろうか。

しかし、だからといって根本から政治システムを再構築するというのは実質不可能であるので現在の政治システムを保ちつつ、「当事者意識の希薄化」を解決する方法を模索する必要がある。日本が見せかけの民主主義国家にならないためにも、今回の調査から、日本の政治システムは私たちが思っているよりも深刻な問題に直面していることを再認識したい。


参考文献

Author

藤井海

Researcher of Policy Research Div.

Operator of Branding & Exterior Design Div.

2000年生まれ。東京都台東区出身。法政大学法学部政治学科に在学。中学生の頃、台東区のデンマーク海外派遣に参加し、日本とデンマークの教育や政治などの社会システムの違いに衝撃を受ける。以来、政治に関心をもち、大学では主に経済分野から政治を学ぶ。CBO明田の紹介でリサーチャーとして参画。

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