コラム

政策企画部門

栗本拓幸

2020/07/02

DXで重要なのは"D"か"X"か

「考えながら走っていく」ための制度・構造を

デジタル・トランスフォーメーション

ポストコロナ

民主主義のDX

私たちLiquitousは、液体民主主義の社会実装を通して「民主主義のDX」に取り組むことをミッションとして掲げています。また、今般のコロナ禍を通して、DX:デジタル・トランスフォーメーションという用語は、より一層の注目を集めています。

誤解されやすいDX

そもそもDX:デジタルトランスフォーメーションとは、何を指し示す言葉なのでしょうか。拙稿「スーパーシティ構想における住民参画と合意」では、まず国のデジタル・ガバメント推進方針にある次の一節を引用しました。

単に過去の延長線上で今の行政をデジタル化するのではなく、デジタル技術の活用に対する考え方を改め、デジタルを前提とした次の時代の新たな社会基盤を構築するという「Digitalization(デジタライゼーション)」の観点

デジタル・ガバメント実行計画 P.5 (https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/densei_jikkoukeikaku_20191220.pdf)

その上で私は、"ここで謳われるデジタライゼーションとは、デジタル活用を前提する新たな社会を構築することを指し示し、一般化しつつあるDX(デジタル・トランスフォーメーション)と限りなく等しい概念であると考えられる。この概念の呼称は問わずとも、冒頭に触れたSociety5.0に向けた「構造転換」にあたっては欠かすことができない"と指摘し、単なるデジタル化ではない、構造そのものの転換が必要との主張を行いました。

現在の社会では、DX:デジタル・トランスフォーメーションが、単なるデジタル活用のあり方という非常に狭い文脈の中で理解され、消費されている側面が非常に強いことは否めません。故に、ここに至るまでの引用文や私の主張を眺めていると、デジタルの活用の手法こそが課題であると主張しているかの如く見えるやもしれません。しかし、その見え方は私の真意ではないのです。

変化の大きい時代だからこそ

より具体的な話に落とし込みながら、考えてみましょう。マクロ的観点から申し上げれば、今の日本社会は急速な少子高齢化や都市一極集中の進展などが起こりつつある一方、インターネット回線やスマートフォンが爆発的に普及するなど、人・モノ・金の動き方が20数年前と比較して大幅に変化しています。

よりミクロな観点として、私たちLiquitousの文脈である「民主主義のあり方」についても検討してみましょう。例えば政治について、政治家と有権者のコミュニケーションのあり方、選挙運動の方法…、様々な物事が時代に合わせて進化しています。この20数年の間に、私たちの身の回りにある「コミュニティ」が形成される方法や、私たちの中にある「公共(性)」も同時に変化して来ました。

これらの変化が連続する昨今を指し示して、「VUCA(Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧))」時代という名称も生まれています。そして「VUCAであるからこそ、将来の予測を立てることは難しい、だからこそ変化に対して、機動的に対応していくことが重要である」という発想は、いつしか当たり前のものになりつつあります。

ただ、私はこの発想に一定の懐疑的な視線を持っています。それは、変化が激しいからと、将来を構想することを半ば諦めているかのように感じられる為です。肝要なことは、今の社会制度・構造のまま、場当たり的に(機動的とされる)対応をとり、変化の波を乗り切ろうとするのではなく、機動的な対応を行うことを前提とした社会制度・構造の構想を断続的に繰り返しながら、変化の波を乗りこなし、社会制度・構造へと昇華させていくことではないでしょうか。

換言すれば、DXとは、デジタル(D)化ではなく、トランスフォーメーション(X)そのものなのです。

DXは手段に過ぎない

何とか走りきろうとするのではなく、考えながら走っていく。その「考えながら走っていく」ための制度・構造を社会の様々なところで創り上げて行かなくてはいけません。それは、「民主主義のあり方」という文脈でも同様です。私たちLiquitousが掲げる『液体民主主義の社会実装』とは、私たちが構想した、変化の波を乗りこなすための社会制度に他なりません。

変化の大きい時代だからこそ、積極的に、物事のあるべき姿を構想することが、一丁目一番地に大切なことです。誤解を恐れずに言えば、テクノロジーの利活用そのものも、手段の一つに過ぎません。目的を達成する手段として、テクノロジーを活用することがもっとも最善の選択肢であると考えているからこそ、私たちは民主主義のDX:デジタル・トランスフォーメーションの推進を謳っています。

その目的とは何か。それは「現状の諸制度や社会構造の中で明らかになる疲弊に対して、小手先の手当てによる延命を試みるのではなく、大胆に変化を起こすことで、時代にあった持続可能な=しなやかな諸制度や社会構造へと昇華させる」ことの他なりません。トランスフォーメーションの担い手として、これからも私たちLiquitousは、液体民主主義の社会実装にトライしていきます。

Author

栗本拓幸

CEO

Chief Officer of Policy Research Div.

1999年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部在学。「知性ある日本」をテーマに、政治参画、Govtech、統治機構改革などの分野で研究を進めながら、NPO法人Rightsをはじめとする複数の法人で理事他、政策提言、教育現場でのファシリテーターやラジオパーソナリティ、YouTube配信など。公共と市民の関係性、Society5.0が喧伝される中で民主主義の在り方についての問題意識から、液体民主主義の社会実装を試みる合同会社Liquitousを設立。富士通総研・トポス会議他登壇多数。公共コミュニケーション学会 (PRAS) 会員。

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