調査研究

政策企画部門

琴浦将貴

2020/06/01

ネット上の情報の整理に関する雑考

デマ

情報

情報トリアージ

今この瞬間も様々な情報が飛び交っている。テレビをつければニュースが映り、Twitterを開けばフォロワーの自由気ままな呟きが流れ、新書を開けば未知の世界を読むことができる。当然ではあるがこの記事もインターネットを介して読むことができる。もし仮にある日突然ハワイに行きたいと思ったとしても、様々な旅行雑誌やサイトで情報を集め、行き方やおすすめの店など様々な情報をいくらでも得ることができる。もし100年前に同じことをしようとすれば情報集めに今よりは多少苦労することだろう。

時代が進むとともに情報を得る手段をますます進化を遂げ、得られる情報もますます増えてきた。さらにインターネットの登場によって誰でも情報を簡単に発信できる時代になり、それはさらに加速度的に増える傾向にある。

電脳空間

かつては“電脳空間”といった名前でSF小説を賑わせた時代もあった。しかしそれも時を超えインターネットの普及によってもはや現実のものとなっている。そしてsociety 5.0の世界ではこのサイバー空間とフィジカル空間が融合し新たな世界が創り出されようとしている。これにより工場・農業で消費者のニーズにコレまで以上に寄り添った生産や自動運転とそれによる渋滞回避など様々な恩恵を得られる。

そして同時に、インターネットや大量のサイト、電子メール等は情報量の増加を指数関数的に加速させている。調査会社IDCの調査では2018年には33ZBであった世界のデータ量が2025年には175ZB(兆GB)に達すると予測している。この数字は今後も飛躍的に伸び続けるだろう。しかし、このような情報量の急激な増加は巷では情報過多社会と呼ばれ、情報の過剰な供給がたびたび指摘されている。

(なにしろ検索エンジンにワードを入れたとき検索上位に何件ものまとめサイトが上位に出てくるのも情報過多社会であることの証左とも言えるだろう)

このように情報量が増え続ける一方で、個々の情報の質は必ずしも担保されるわけではなく、真偽が明らかでない情報が出回ることは日常茶飯事である。

このような玉石混交のサイバー空間はフィジカル空間以上に情報の伝達・拡散が早く、事実とはいえない情報いわゆる“デマ”も広がりやすい。(特に災害発生時。熊本地震発生時にはライオンが逃げ出したといった事実無根のデマが拡散され問題視された。)

大前提として、情報を選ぶ側は根拠のない情報に惑わされず、発信する側も誤りのないよう気をつけて発信できれば理想的だが、現実的にはこれは難しい。

何か特定の目的で悪意をもってデマを流したり、あるいは善意で発信している情報が実は誤ってしまっていたりと様々なケースが考えられる。(特に匿名で気軽に情報発信ができるインターネットはなおさらだろう)情報過多社会において我々は情報に対して、どう向き合っていけばよいだろうか。

デマの拡散と収束

デマについてTwitter上の例に着目して見てみたい。

東日本大震災ビッグデータワークショップの報告会において東日本大震災の際のTwitter上のデマの拡散と収束等について様々な報告がある。その中の東北大学乾・岡崎研究室による発表によればデマの拡散と訂正による収束にはいくつかのパターンがあり、

・デマの拡散から何時間か経った後に訂正、徐々に収束

・デマの拡散からすぐに訂正、時間をかけて収束

・デマの拡散からすぐ訂正、収束せず

とされる。

特にTwitterといったSNSは、ある情報が一定程度拡散された後に、その情報が更新または訂正され新たな情報が発信されても同程度拡散され元の情報を受け取った人のもとに届くとは限らない。報告でも言及されているように東日本大震災の際にもある病院が支援要請を流したところ、無事支援要請を受けることができたが、その後も支援要請の情報がしばらく拡散され続けてしまっていた。※1

※デマの発生過程や終息等については他にも様々な先行研究があることを念のため申し添えておく。

情報トリアージ

また、特に災害現場という特殊な場合においては、大量にいる負傷者の治療・搬送で個々の負傷者に優先度をつけるトリアージというシステムがあるが、これを大量の情報に適応し一つ一つに緊急性、優先度を考慮して情報を整理する「情報トリアージ」という考え方がある。

LINEがまだ無かった東日本大震災とは違い、SNSが急速に発達した現在では特に情報が錯綜する事故や災害時に、人から人へ伝わる口コミとは別にネットを介して様々な情報の伝達・拡散がなされる。その際に飛び交う情報一つ一つに向き合う事は難しい。そこで、専任のチームを置き情報を収集・吟味(優先度の吟味)・選別を行い濾過する事で本当に必要な情報をまとめようというものである。もちろん、どこで誰が運用するのかといった課題も多々あるが、情報が錯綜し混乱する場面では有効であろう。

データサイエンス

こうした災害時だけに限らず、日頃からデマの拡散を抑制し“健全“な情報社会を構築していくことが理想的ではある。簡単なのは情報の発信者を明確にすることだろう。誰がどういう意味で発信しているのか

大量の情報を処理するという意味ではビジネスの現場で需要予測などを行うデータサイエンティストも近年活躍の場を増やしている。膨大なデータを処理し価値を見出す作業は情報過多社会おいては欠かせない。

いずれにせよ情報トリアージやデータサイエンスのように情報を拾い上げ・整理・加工する営みはますます必要とされていくだろう。


Author

琴浦将貴

Researcher of Policy Research Div.

2000年関西生まれ。 関東で育ち、東京都市大学理工学部に在学。Liquitousへは政策企画部門にリサーチャーとして参画。 大学では電気や通信について学んでいるが、それ以外にも交通、行政、危機管理や量子通信など様々な分野に興味関心がある。

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