調査研究

政策企画部門

琴浦将貴

2020/04/20

意思決定システムと選挙

選挙は最適な意思決定システムか?

意思決定

選挙

私たちLiquitousは、「一人ひとりの影響力を発揮することができる社会」を目指して、液体民主主義の社会実装を通した民主主義のDXに取り組んで参ります。その中での一つの目標として、“みんな“や”民意”といった一括りにされた見做しではなく“一人ひとり“が意思決定のプロセスに参画できる新たなプラットフォームを構築していくことを目指しています。

現状で一人ひとりが意思決定に参画できるシステムといえば選挙が挙げられます。選挙はある一定の年齢以上であれば誰でも平等に(一人ひとり)投票でき(意思表明)、政策決定(意思決定)にも何かしらの影響を与えます。例えばこれまでの55年体制の構築・崩壊、各内閣の発足、政権交代等の政治イベントの多くは政治家自身の手によるものというよりは、選挙という国民一人ひとりによる参政権の公使の結果によってもたらされているといっても過言ではないでしょう。

しかし、(日本の場合においては)投票をするしないは各個人に委ねられており、90年代に投票率が急落して以降近年の国政選挙の投票率は50%台にまで落ち込んでいます。[1]

当然投票をしない、つまり意思表明をしなければその意思は開票結果には反映されませんが、選挙を行うことで多数決という原理の中であたかも市民全体の”民意”“総意”が示されたかのように一括りに評価されてしまいがちです。これでは(特に国民主権が憲法で定められた日本においては)国民一人ひとりが意思決定に参画できているとは必ずしも言えないでしょう。もちろん、投票に行かなかった=棄権したことそれ自体がその人の意思だという見方もあるかもしれません。ただ、そうであったとしても、なぜ棄権するに至ったのか、政治や候補者の事がよく分からなかった、投票日がたまたま忙しかった、体調が悪かった、あえて投票には行かず棄権したなど投票に行けなかった理由には様々なものがあると考えられます。

そこで、意思表明の機会でもある投票に行かなかった人はなぜ投票に行けなかったのか、つまりなぜ意思表明に参加できなかったのか、先行研究は多々残されていますが、ここでは選挙に行けなかった理由に絞り各種調査をあたってみました。

下表はLINEが第25回参院選挙後の2019年7月22日〜23日に全国のLINEユーザー18〜69歳を対象に実施した調査で、「選挙に行かない理由」としては次のようになっています。[2]

予定があった、忙しい等都合がつかないといった理由が全体の3分の1を占め、その次には投票したい候補者がいない、政治がよくわからない、興味がない、投票に行くのが面倒、意味がない等選挙自体に消極的な理由が多くなっています。

そして次の表は公益財団法人 明るい選挙推進協会が2019年参院選後に発行された全国18歳以上の男女に実施した意識調査の結果です。[3]

こちらもLINEの調査と同じく選挙に関心がない等消極的な意見や、仕事があった等都合がつかなかったという理由が相次いています。

続いて下表は埼玉県選挙管理委員会が2016年に発行した投票率向上に関する報告書で県内20歳以上の人に対し行った意識調査の結果です。[4]

やはりこちらも仕事があったから、選挙に関心がないからといったところが多くを占めています。

と、このように選挙に行かない理由として上位にくるような理由はどれも同じで

「仕事や体調不良で投票所に行けない」

「政治・候補者の事がよく分からない、関心が無い」

といったものが多いということが分かりました。

他の理由を見渡してみても、住民票を移していない、天候が悪かったといった理由も散見される一方で、私一人投票してもしなくても変わらない、選挙によって政治はよくならない、当落予想を見て投票に行く気にならなかった、いつも行かない、面倒だった等選挙に対しての無関心・ネガティブな理由がやはり多数派を占めています。

意思表明の機会という観点から選挙を考えれば、このようなネガティブ・無関心といった理由で敬遠されるのはあるべき姿とは言えないでしょう。

また、選挙そのものも国政選挙に限れば数年に1回あるかないかであり、これは言い換えれば意思表明できる機会として数年に1回しか用意されてないということを意味します。これでは刻一刻と変化するこの時代を考えても選挙は意思表明の機会としては(選挙というシステム自体を否定するわけではないが)十分ではないのではないでしょうか。

であれば、どのようにしてネガティブ・無関心といった人々に関心を持ってもってもらう=意思決定に参画してもらうか、そして選挙のようなオフラインのシステムでは限界がある意思表明の機会の創出・拡充をどのようにして図っていくのか。

我々なりの一つの解決策(と言うと少し仰々しいですが)として、Politechと言われるように:テクノロジーを駆使し一人ひとりがオンラインでの議論等を通し、気軽に参画できるものを創り出し提供することができれば、政治的無関心であったり用事が入ったりして投票所へなかなか足を運べなかった人に対しても、オンライン上のプラットフォームで議論に巻き込む等あらゆる形で参画を促し、より洗練された意思決定を生み出す事も不可能ではないと考えられます。現にこうしたソフトウェアは海外では他記事で紹介したように既に提供されているものもあり、我々Liquitousでも開発に取り組んでいます。

あらゆる価値観、あらゆる考え方の存するこの世の中で、こうしたテクノロジーを駆使した「DX」によって一人ひとりが、完全に合意することは難しいとしても、影響力を持ってより良い意思決定を編み出し、また社会課題の議論・解決の模索などに対して日常的に参画できる社会の形成ができるのではないかと考えています。我々Liquitousもこうした社会の構築に試行錯誤しつつ取り組んで参ります。


[1]総務省「国政選挙における投票率の推移」https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/ritu/

[2]LINEリサーチ「【LINEリサーチ】「若者よ、選挙に行くな!」動画の影響は?選挙に行かない理由を年代別に調査(2019年7月)」https://www.linebiz.com/jp/column/research/20190729/

[3]「第 25 回参議院議員通常選挙全国意識調査―調査結果の概要-(令和2年3月)」公益財団法人 明るい選挙推進協会

[4]「投票率向上に関する報告書(平成28年5月)」埼玉県選挙管理委員会

(いずれも2020年4月12日閲覧)

Author

琴浦将貴

Researcher of Policy Research Div.

2000年関西生まれ。 関東で育ち、東京都市大学理工学部に在学。Liquitousへは政策企画部門にリサーチャーとして参画。 大学では電気や通信について学んでいるが、それ以外にも交通、行政、危機管理や量子通信など様々な分野に興味関心がある。

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