オピニオン

政策企画部門

栗本拓幸

2020/04/13

Liquitous Inc.の設立にあたって

液体民主主義の実装を通した「民主主義のDX」を

民主主義のDX

液体民主主義

この度、筆者(栗本)は合同会社Liquitousを設立しました。既に公開しておりますコーポレート・アイデンティティ・シート(CIシート)等でも触れております通り、Liquitousはソフトウェア開発、政策企画、意匠という3つの方向性=チームから、『液体民主主義』の社会実装を目指して事業を展開して参ります。

私たちLiquitousは、「一人ひとりが影響力を発揮することができる社会」を実現することをミッションとして掲げています。社会とは、私一人ひとりから構成される共同体です。しかしながら、社会、あるいは社会の中に存在する様々な枠組みの中で、時によっては一人ひとりの気持ちや利益が顧みられないこと、あるいは一人ひとりが意見を表明したり、対話を積み重ねたり、あるいは協働して合意を形成したりする機会が担保されないことも少なくありません。私たちLiquitousは、液体民主主義を実装していくことで、これらの問題を一歩ずつクリアしていくことができるのではないか、という仮説に基づいてLiquitousを設立しました。

現状に対する問題意識

筆者(栗本)は、私たちと公共の関係性について、以前から強い問題意識を持ってきました。ここで言うところの「公共」とは、私たち一人ひとりで構成される社会の中の共通の利益(Common Interest)に関わるものであり、いわゆる「官」と呼ばれる公的セクターが中心的にその領域の枠組みを担うとされてきた領域です。マスメディア等の報道を通して、例えば、公共の利益配分を行うための政治に繋がる投票率の低迷や、自治体やPTAと行った公共的な枠組みが解体されつつあることに対して、警鐘が鳴らされることはあったとしても、抜本的な制度改革が行われることは、ほぼありませんでした。世の中を見回すと、様々な場所で「テクノロジーの利活用」が喧伝されていますが、それらの大半は既存の制度・仕組みにテクノロジーを「(表面的に)載せる」ものに過ぎず、テクノロジーの存在を基盤に置くものではありません。特に、政治や行政、民主主義の領域で、テクノロジーを実装しようとする制度改革は遅々として進んでいないとの指摘ができるのではないでしょうか。

近年、純粋に営利を追い求めるだけではない様々な組織体が出現し、共通善(Common Good)の実現を模索し始めています。NPO/NGO、社会起業(家)をはじめとする様々な組織体が、いわゆる「官」と呼ばれる公的セクターと時には連携し、時には代替する形で、公共の担い手となる事例も増加しつつあります。共通善を実現する組織体が増えつつある一方で、年功序列などの従来から存在する組織慣習や、昔ながらの意思決定プロセスが残置される事例も数少なくありません。

液体民主主義とは何か

そうした中で、私たちLiquitousは、「液体民主主義」という意思決定の形を社会に実装していきます。サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合する、Society5.0の時代に差し掛かる中、公共領域の意思決定の形である民主主義の形も絶えず見直していく必要があります。そこで私たちLiquitousは、欧州を中心に先行事例があるLiquid Democracyから着想を得た「液体民主主義」の社会実装を通して、民主主義のDX(デジタル・トランスフォーメーション)、そしてこれから(ポストコロナ)の時代の公共の再構築に取り組み、「一人ひとりの影響力を発揮することができる社会」を実現していきます。

欧州のLiquid Democracyは、一人ひとりがオンライン上のプラットフォームを通して、時には直接的に、場合によっては他人に委任して間接的に、意思決定に参画することが出来るモデルです。Liquid Democracyという名称は、プラットフォーム上では、間接民主主義と直接民主主義が(液体のように)融合することに由来しています。そして、私たちLiquitousは、欧州のLiquid Democracyを発展させた「液体民主主義」の社会実装を行います。私たちLiquitousの液体民主主義は、単に間接民主主義と直接民主主義の融合を図るのみならず、オフラインとオンライン、組織・個人同士といった様々な枠組みを越えて融合させていきます。これまでは存在せざるを得なかった「みんな」「空気」「一般論」「民意」といった『見做し』を解きほぐし、個人一人ひとりの意思決定プロセスへの参画を前提とした意思決定モデルです。

私たちLiquitousは、このプラットフォーム上で意思決定の全てを完結する形も、あるいは現実世界でのディスカッションと併用し、相互補完的に議論を行う形も想定しています。代表者に限らず、より多くの人間が意思決定プロセスに参画してもよくデザインされた well-designed 意思決定のプラットフォームを活用することで、混乱や破綻を起きる可能性を低減していきます。同時に、場を意識的にデザインすることがより容易なることから、「対話」と「共創」に重きを置いた意思決定を生み出します。そして、オンライン上のプラットフォームを活用することで、構成員同士でよりフラット・オープンな議論を可能にしつつ、意思決定の流れを保存し透明化に繋げます。

私たちLiquitousは、NPO/NGO、社会起業(家)といった、純粋な営利追求を目的としない新しい組織体や、営利追求を目的とする組織、加えて自治体や教育組織、政党といった大小様々な組織体の中に液体民主主義を実装することを目指していきます。そして、液体民主主義という仕組みの下で、一人ひとりが意思表明を行い、対話を積み重ねていくことで、一人ひとりが影響力を発揮しながら、意思決定を『共創』出来る組織の実現に近づけることに寄与していきたいと考えています。

Liquitous政策企画と液体民主主義

筆者(栗本)がチーフを務める「政策企画」チームでは、政策の収集・分析・提案/提言、そして政策の実行に取り組みます。一般的に政策というと、例えば政治や行政が展開する様々な施策を想起しますが、私たちLiquitousは政策を「(発見した)社会問題について、多様なセクターを巻き込みながら解決を図る為の施策」として定義しています。そして企画を「何らかの策を現実社会に還元していく営み」として定義しています。つまりLiquitousでは、政策企画を、「社会問題について、多様なセクターを巻き込みながら解決を図る為の施策を現実社会に還元していく営み」を指し示す言葉として使用しています。

私たちLiquitousにおける政策企画チームの役割とは、主として開発チームが手がけるソフトウェアの実装について具体的な研究・提案を行うことが挙げられます。また、私たちLiquitousが目指す社会の実現に向けた、具体的な政策を提案・アドボカシーすることも重要な役割です。加えて、テクノロジーと意思決定・民主主義をテーマに、先進・参考事例を収集分析することにも取り組んでいきます。

そして、政策企画チームは、机の上で分析や提案を行うだけではなく、自治体や企業など、多様な社外パートナーと連携を図りながら、私たちLiquitousの目指す社会を具現化する試みを展開していきます。

Lisearchブログについて

Lisearchブログは、私たちLiquitousが事業を展開する中で得た気付きや知識を記録し、少しずつ社会に対して還元していく為に設置しました。もちろん、ソフトウェア開発や意匠チームからも、Lisearchブログへの寄稿をいただく予定ですが、主として政策企画チームが運営・更新して参ります。拙い内容で恐縮ではございますが、ご指導ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い致します。

Author

栗本拓幸

CEO

Chief Officer of Policy Research Div.

1999年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部在学。「知性ある日本」をテーマに、政治参画、Govtech、統治機構改革などの分野で研究を進めながら、NPO法人Rightsをはじめとする複数の法人で理事他、政策提言、教育現場でのファシリテーターやラジオパーソナリティ、YouTube配信など。公共と市民の関係性、Society5.0が喧伝される中で民主主義の在り方についての問題意識から、液体民主主義の社会実装を試みる合同会社Liquitousを設立。富士通総研・トポス会議他登壇多数。公共コミュニケーション学会 (PRAS) 会員。

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